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第38号
2008年3月15日発行
大阪体育学会 広報委員会

 

研究方法セミナー報告
企画委員会   飯田貴子 
「フィールドワークを学ぶ」
日時:平成19年9月8日(土)10時より16時30分
場所:大阪体育大学アネックス4F
内容:
●「インタビュー調査の可能性」藤原直子(椙山女学園大学 准教授)
 性的マイノリティを対象としたインタビュー調査をケーススタディとして、インタビュー調査の意味の説明後、先生が指導された卒業論文を資料に基本的な留意点について、問題意識の明確化、研究者のジェンダー、セクシュアリティに関する理解の重要性、インタビュイーの権利尊重、ラポールの形成、研究者の当事者性という問題、匿名性の確保、調査対象者へのフィードバックおよびプライバシーの確保の観点から話された。
 次に、他者を理解するためのインタビュー手法を学び、参加者がインタビュアー、インタビュイー、観察者となり「なんちゃってインタビュー“最近はまっていること”」というタイトルでワークを行なった。
●「個人の語りに耳を傾けること」豊田則成(びわこ成蹊スポーツ大学 准教授)
 トップアスリートの競技引退に伴うアイデンティティの再体制化に関する研究から、アスリートを生涯発達の観点から捉えることの必要性を感じ、質的心理学(個へのアプローチ)の研究方法を開発・発展された背景から、現在の研究「ライバル(テニスプレイヤー引退後デビスカップの監督・コーチとなった二人)」を紹介され、質的研究手法についてのコツを話された。
午前中とは対照的に、匿名性の確保が難しい「個の本質の語り」を求めて、インタビューを80〜100回も実施された先生の研究の深層を述べられ、その中で、リサーチクエッションの設定、研究(インタビュー)手続き、分析方法(KJ法、グラウンデッド・セオリー・アプローチ)、量的と質的研究の歩み寄り、質的研究の質の確保について取り上げられた。
●質疑応答と感想
 質的研究、とくにセンシティブなテーマにおける対象者の確保、信頼性と質的研究に対する眼差しの国内外比較、研究倫理について質問がなされた。また、質的研究は、これまでの価値や規範、例えば「性」「スポーツ」「研究」に対する従来の考え方を如何に乗り越えていくか、研究者の見方の変換が必要であるとの意見も出された。
 今回のセミナー参加者は、会長、理事長をはじめ学部学生に至るまで、研究歴や分野も様々な人々で構成されていた。量的研究がより真実に迫る科学であると認識されている現状で、トップレベルのフィールド研究を聴かせて頂き、各人の研究に広さと深さを増す有意義なセミナーであったと考える。 
参加者:19名
当日の抄録は、研究方法セミナーのページをご覧下さい。

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