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  第42号
2010年3月29日発行
大阪体育学会 広報委員会
 

大阪体育学会に期待するもの
会長  後藤 幸弘(兵庫教育大学) 
 日本体育学会大阪支部(昭和27年本部理事会承認)として昭和36年名実ともにスタートした大阪体育学会は、半世紀以上の歴史があります。また、平成19年には学術会議研究協力団体の1つに承認され、独立学会としての地歩を確立しました。
 この間、9名の支部長・会長の下に11の大学に事務局を担当いただき、その運営に尽力いただきました。50年周年記念と会長任期満了に当たり、会の運営にご尽力いただいた関係諸氏にお礼申し上げます。
 ところで、「教育」と「研究」は不可分で、その場合「教育」が「研究」の延長上にあるという一方的な関係でなく、「教育」を通して自分の「研究」のあり方を探る方向も必要です。この両方向の力が調和的に発揮された学会にすべく、これまでの研究方法に基づく分科会から、『身体運動文化』『スポーツ』『健康』『教育』の4つの『領域別研究会』に平成17年改組しました。それは、体育の教科成立基盤である『身体運動文化(スポーツ)』は、社会学的・歴史学的・生理学的・運動学的・心理学的・教育学的に研究するに値する国際的な現象で、総合文化であるからです。また、社会的にも『身体運動文化』の重要性は大きくなっています。しかし、それらの意味について考え、学問的な関心を持つスポーツ実践者は多くなかったように思われます。それは、スポーツがあまりにも身近に位置しているため、明らかになっている・分かっているような錯覚を生じさせているためと考えられます。スポーツマンの中に、頭が筋肉であるという人がいたり、体育会系という言葉がよい意味で使われないことの多いことがそのことを感じさせます。多くの人は、『身体運動文化(スポーツ)』を享受しながらも、それ自体について考えてみることはあまりしないように思われます。スポーツは楽しければそれでよいのだという「一種の思考停止・判断停止」に支配されている傾向があります。欧米では、スポーツマンは、クレバーで実行力のある人の代名詞であります。我が国においてもそうあるべきです。
 この状態から脱却し、『身体運動文化』の奥深さに触れ、それを教育に生かし、「的確な判断に基づく行動力の育成」に寄与する体育学の構築と実践に貢献するものに、前述の組織改革をしなければなりません。次の10年の課題は、正にここにあると考えています。会員各位の叡智・研究成果の集積を期待します。

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